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1.ミクロン単位の精度を求められる歯科治療
根管治療を行う時、根管を開けるファイル(ドリル)は、最も細いもので先端径60ミクロン。
咬み合わせの調整をする時、歯や顎関節に障害を与えない許容誤差は、30ミクロン。
審美修復を行う時、理想的な接着剤の厚さは10ミクロン前後。(1ミクロンは1000分の1ミリ)
上記に挙げたのは、私たち歯科医師が日常行う診療の中で求められている診療精度の一部です。
ご覧のように、さまざまな歯科治療においてミクロン単位の精度が要求されています。
2.マイクロスコープの導入
当院では、高い診療精度を実現するため、マイクロスコープを導入し、マイクロスコープ専用室を作りました。
左手に、CT・デジタルレントゲン画像表示用モニター、正面に拡大画像をリアルタイムで映す大型モニターを備えております。
マイクロスコープ室全景
3.マイクロスコープ(手術用顕微鏡)とルーペ(拡大鏡)
マイクロスコープ(手術用顕微鏡)は、大口径の明るい対物レンズに、双眼の接眼レンズと同軸の照明(術野に影ができにくい)を持ち、術野を立体的に3~20倍程度の高倍率で拡大して見ることができる光学器械です。
人間の肉眼でのものを見分ける力は0.2mmが限界と言われています。しかし、保険外診療で行うような高度な治療においては上記のようなミクロン単位の正確さが要求されます。そのようなとき、マイクロスコープを使用し、肉眼の3~20倍に拡大した視野で治療を行うことで、より正確な作業が可能となり、治療のレベルを格段に向上させることができます。また、カメラやモニターと接続することにより、画像や動画をリアルタイムに記録して残すことができ、説明用や研究用に用いる事ができます。
ルーペ(拡大鏡)は、よく医療ドラマの手術のシーンに出てくる、目の前に小さな望遠鏡を吊り下げたような眼鏡です。倍率は2.5倍~8倍とそれほど大きくはなく、同軸照明でもないため、暗く深いところを覗くのは苦手ですが、架台固定式ではないため、機動性が高く、首を向けるだけで見たい所を見ることができるメリットがあります。視野も広く明るいため、審美修復など、治療への応用範囲が広いのが特徴です。
これらマイクロスコープやルーペを使用することにより、歯科医師の“経験”や“勘”だけに頼ってきた従来の歯科治療では不可能だった高度なレベルの治療を行うことができるようになります。
当院では、さまざまな治療にマイクロスコープやルーペを使用し、より精密で高度な治療を患者様に提供するため、日々研鑽を積み、技術の向上に努めております。
4.従来の歯科治療と現在の歯科治療
一昔前までは、歯の治療といえば「虫歯にはコレ、歯が無くなったらコレ」とパターンがほぼ決まっており、患者様に選択の余地はほとんどありませんでした。したがって医師からはたいした説明もなく、たとえあったとしても選択肢は多くなく、患者様はただ口を開けて治療が終わるのを待っていることしかできませんでした。
時代は変わり、現在では治療に多くの選択肢があります。たとえ小さな虫歯でも、治療方法は3つも4つもあるのです。
その中の一つにマイクロスコープやルーペを用いた精密治療があります。これは「何で治すのか」という材料の話ではなく「どう治すのか」という技術の話です。
口の中は、実は”見えそうで見えないところ”です。暗く狭く、陰に隠れる部分が多いのです。そんな所をレントゲン等を参考にしながら経験と勘を頼りに進めていく、これが従来の歯科治療です。
しかし、1990年代後半に歯科の世界にも導入され始めたマイクロスコープ(手術用顕微鏡)はこの状況を一変させました。マイクロスコープは狭く暗い口の中を明るく拡大し、歯の奥深いところまでくまなく見せてくれます。この装置で歯を見ると、肉眼で行う治療だけではいかに不備が多いかが誰の目にも解ります。したがって、マイクロスコープを用いることであらゆる治療の精度が上がり、今までうまくいかなかったことや解らなかったことに解決の道が開かれたのです。
肉眼
約3倍
約5倍 虫歯の部分に肉眼では見えなかったヒビが見えています
マイクロスコープを用いた顕微鏡歯科の大家、ペンシルバニア大学歯学部歯内治療学講座のSyngcuk KIM 教授はこう述べています。
“You can only treat what you can see”
(見えるものしか治療できない)
5.根管治療におけるマイクロスコープ
根管治療(根の中の治療)は、マイクロスコープが最も必要とされる治療のひとつです。
歯の中にある根管は、非常に複雑で細かい形態をしているにもかかわらず、従来は、”手探り”で、手指の感覚だけを頼りに治療を行ってきました。
しかし、マイクロスコープを使用することにより、歯の内部を拡大視し、直接根管内を見ながら正確に治療が行うことが可能となるため、従来では考えられないような細部の治療も可能となり、治療のレベルを格段に向上させることができます。
第4根管と言われる従来は見落とされていた根管を見つけることができました。
原因不明の腫れと痛みがある根管の中にヒビを見つけました。顕微鏡が無ければ絶対に見つけられないヒビでした。
感染した根管は、中にヘドロ状の腐敗物がたまっています。
綺麗に洗浄すると腫れも痛みも消えました。顕微鏡を用いることで、直接、目で見て確実な洗浄ができます。
6.MI治療(最小限治療)のためのマイクロスコープとルーペ
マイクロスコープやルーペを用いて、虫歯の患部を高倍率で直接見ながら治療を行うことによって、より精密なMI治療(ミニマルインターベンション・最小限治療)を行うことが可能となります。すなわち、虫歯になった悪い所のみを削り取ることが可能となり、削る歯の量を最小限に抑えることができるようになります。また、虫歯で削った部分を封鎖していく段階でも、マイクロスコープやルーペを使用することにより、目では確認できないようなわずかな段差(ギャップ)も見逃すことなく、より正確な充填(詰め物)を行うことが可能となります。
さらにこの正確な治療が、その後の虫歯再発予防に対しても大変重要となるのです。
歯肉と詰め物のスキマにできた虫歯です。歯肉の下にも虫歯が進行して歯肉も腫れています。5倍拡大下で治療します。
腫れた歯肉を炭酸ガスレーザーで処理し、虫歯のみ徹底的に除去します。健全な詰め物は外したりしません。
接着剤とプラスティックを用いて虫歯の穴を封鎖。レーザーの痕も1週間できれいに治ります。
7.審美歯科治療におけるマイクロスコープとルーペ
審美歯科治療では、美しさとともに「生体に親和した機能」を得ることが必要となるため、あらゆる治療ステップにおいて、非常に高い精度が要求されます。
通常、適切な審美歯科治療を達成するには、30~40ミクロンという非常に高いレベルの精度を必要とします。肉眼のみに頼った従来の治療では、当然限界があるため、理想的な精度を得ることはできません。
しかし、マイクロスコープやルーペによる精密な治療を行うことで、数ミクロン単位の高い精度の治療を行うことが可能となるのです。
オールセラミックの形成。高精度な形成が可能です。出血がないため、印象(型)も正確に取れます。
術後です。
8.ライカとカールツァイス
ライカとカールツァイスは、カメラやレンズで有名な、共にドイツで生まれた高級光学機械メーカーです。
マイクロスコープは、ライカマイクロシステムズ社製のM320Dを使っています。
拡大率は3.2倍から20倍、強力なツインLED照明搭載で深く暗い根管も覗くことができ、術野に影ができにくい設計になっています。フルハイビジョンカメラ内蔵型のオールインワンモデルで、静止画、動画が簡単に記録できます。また複雑な配線が露出していない上、表面を抗菌塗装してあるため、機械の衛生管理が簡単にできる最新機器です。
ルーペは、カールツァイス社製のEyeMag PRO、5倍を使っています。
明るいケプラー式光学系のレンズを用い、その精細な画像は審美修復に必須のものです。
他に、サージテル社製215N、2.5倍のルーペも使っています。
ガリレアン式のレンズは低倍率ですが、広視野で、安全に一般歯科診療が行えます。
9.最後に
マイクロスコープ及び、ルーペの使用は、医師の裁量により必要に応じ使用いたします。
必要がない場合は使用いたしませんのでご了承お願い申し上げます。
また、精密治療は、診療内容に応じ、保険外診療になる場合がございます。
これも重ねて、ご了承お願い申し上げます。ただし、その場合はあらかじめご説明の上、ご了解を得た後でないと、治療にかかりませんのでご安心ください。